「監督」という仕事 ― 自主性を引き出すための苦心

少し前の情報ですが、二人の名監督がそれぞれ
「小さな工夫と苦心」を積み重ねている点が非常に興味深い記事でした。

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雑誌「Nunber」 - Vol.799 目覚めよ、ニッポン力。より

P.33 佐々木則夫女子サッカー日本代表監督)
「自主性・即興性を育てる、監督の苦心」

「09年以降、僕からのこまごました戦術的な指示は極力控え、練習中の話し合いや選手だけのミーティングなどで問題を解決するように持っていきました」
(中略)
「彼女たちがどんな話をしているのかは、常に気にかけてましたよ。知らん顔しながら聞き耳立ててたりね(笑)。どうも間違った方向へ進んでいるようだと思ったら、チームスタッフに『こういうビデオをそれとなく見せておいてくれ』と指示して、間接的にヒントを与えたりもしたし。そうしていくうちにやがて選手が積極的にお互いの考えをぶつけ合い始め、自分たちの適切な判断で試合の流れをコントロールできるようになっていった。誰かに委ねず、自分たちで考える習慣をつけさせたら、一生懸命結果を出す。そんな資質も日本人にはあるんだってことがよくわかりました」

P.58-59 岡田武史(クラブチーム「杭州緑城」監督)
「中国人選手にプロ意識を植えつける」

 岡田は選手、スタッフ全員を集めて、まるで子供に言い聞かせるようにゆっくりとした口調でたしなめた。
「いいか、プロとして今、何をすべきかを考えろ。俺はお前たちを信頼する。自由を与える。だけど自由の意味を履き違えるんじゃない。裏切ったヤツは許さない」
(中略)
「常識を変えさせるには『これ、やれよ』って押さえつけるほうが手っ取り早い。でもそれだと上のレベルには絶対にいけない。時間はかかるけど、ちょっとずつ変えていくしかない。たとえミニゲームだろうが勝負にこだわってベストを尽くしたのか、絶えず彼らに問いかけていかないといけない」
(中略)
受け身でやらされている雰囲気をなるべく作らないようにと、グループで競わせるレクリエーション的な練習メニューも少なくない。食事会場は周りとコミュニケーションを取らせるようにビュッフェ形式にもした。(中略)コーチの発案で筑波合宿の際には筑波山で野営キャンプを張った。夜明け前、一グループに一枚ずつ地図を渡し、協力して山を登らせた。コーチをはじめ、ドクター、用具係などスタッフ全員を帯同させた。日の出が見えると、大きな歓声が巻き起こった。一体になった瞬間だった。

(別に今の会社について悪く言うつもりはないのですが)
日本企業には多かれ少なかれ「お上が言うことにゃ逆らえない」という風潮があり、
今わたしがやっているTQMの仕事で真の問題解決を図ろうとする際に
この「上位下達」は諸刃のつるぎだと感じています。
さらに厄介なのは「優秀なプレイヤーほど、
部下の細かい点まで指示したがるマネージャーになりがちだ」という点です。
自戒も込めて、両師の忍耐強い指導法に倣いたいなと思います。