F1レース回顧:2012_Rd.2 Malaysian GP

Rd.2 Malaysia GP - Winner: Fernando Alonso (Ferrari)


セパンの気まぐれな雨が、F1勢力図にさらなる混乱をもたらした。

・・・いろいろと書きたいことがあるような気がするのに、
なんだか筆が進まないのは、やはり私も日本人の一人として
小林可夢偉の落胆に同情を禁じえないからだろう。
1年前のカナダで私たちは同じようなシーンを見ていた。
可夢偉は同じ白黒のマシンを駆って、レースの大半を2位で走行したが
ポディウムに手が届くと思った瞬間に気まぐれな空から見放され
失意の7位フィニッシュを飾った。
そしてチームメイトは今回、同様の状況で2位をキープし、勝ち取った。

ネガティブな言葉はネガティブな結果を引き連れてくる。
可夢偉もそうだが、私もそう信じている一人で
なるべく1つの結果を捕まえて結論めいたことは書かない主義なのだが
今回ばかりは不安の類推を並べざるを得ない。

昨年のカナダ以降、本当に少しずつなのだが
Perezが可夢偉に肩を並べ、Sauber内での序列が変わろうとしている。
確かに「結果」と「過程」は違う。
しかし10戦以上も戦えば、結果は過程を巻き込み「真実」へと変える。
今年に至っては、アルバートパークでもセパンでも
Perezは予選・決勝のほとんどで可夢偉の前を走っている。
いずれにせよファンも可夢偉も「リセット」する必要があるのだろう。
(大丈夫。Mercedesの2週連続の悲劇に比べればまだ明るいほうだ)

かつて「F1はスポーツであり政治ではない」うんぬんと涙交じりで語り、
気づけば政治のイメージが色濃くなった、最強のドライバー、Alonso。
彼が奇跡の優勝を遂げたレースだから言うわけではないが、
F1=スポーツであると定義するのなら
最近のスポーツ界はどこも、いわゆる「スターシステム」の循環が早い。
日本人ならナガトモ、ニシコリ。世界ならマキロイ、ベッテルか。

4年前、モンツァの雨を味方につけ
初めての表彰台を優勝の栄冠で飾ったVettelは
わずか1年後にチャンピオンシップを争い、翌年あっけなく頂点を極めた。
「たった1度の成功」だけで、だ。
かつてなら実績を積んでトップチームに進むのが定石だったが
Buttonのようなサクセスストーリーの方が、おとぎ話と化した感さえある。
現代のスポーツ、そしてマスコミは一瞬の才能のきらめきを見逃さない。
つぶれようが登り詰めようが、世間には関係ないことだから。

Sergio Perezは、何だか政治の匂いがして好きになれないドライバーだが、
マレーシアの雨に背中を押され、見事に一瞬の輝きを放った。
気の早いマスコミは早くもマッサとの交換を取り沙汰しているが、
遅かれ早かれ、スターシステムのメリーゴーラウンドの一角に彼は座る。
これは間違いない。返す返すもそれが可夢偉でないのは残念だ。
・・・では他にもそんなドライバーはいないだろうか?
そういう意味で、今シーズンの楽しみ方を学ぶことができたレースだった。

それにしても気になることが多すぎる。
なぜRosbergはかつての輝きを失い、精彩を欠き続けているのだろうか?
もしかして今季は運転とマシンの技術競争の成熟が極まって、
F1=タイヤの温度と質の管理選手権になっているのだろうか?
そして「トップ10を9つのチームが分け合った」という今回の結果は
久方ぶりの大混戦を象徴しているが、今後どんな様相に変わるのだろうか?

中国も楽しみだ。