F1:「小林可夢偉が優勝」と期待できる7つの根拠

20年F1を見てきたが、これほど現実的に「その日」を意識できる日曜は初めてだ。
小林可夢偉の初優勝」を事前に予測できる7つの根拠をあげ、彼を応援したい。
日本の希望のためにも・・・


1)フリー走行の結果から「優勝候補は4チーム」
金曜日土曜日のそれぞれのセッションでのタイムは
セッティングも燃料搭載量も履いてるタイヤもまちまちなのだが
FP1からFP3のタイムを「トップから1秒以内に入ったか」という視点で見ると
3回ともコンスタントに上位に入っているのは
Mclaren、Redbull、Mercedes、Sauberの4チームしかない。これが上位集団だ。

2)Mercedesの決勝はアテにできない
今回はじめてポールポジションを取ったRosbergは
過去の成績からもわかるように、上海は得意なサーキットだ。
しかし。
(技術的な詳述は避けるが)MercedesはW-DRSという特殊なシステムの優位性で
今シーズンはアルバートパークでもセパンでも予選上位に躍り出たが、
決勝では優位性が失われてきた。信頼性にも乏しく、彼らの決勝はアテにできない。

3)Buttonが恐れるものは?
残る優勝候補3チームを見ると、一番前からスタートするのが小林可夢偉
その後ろにいるButton、そしてHamiltonがもっとも怖い存在となる。
彼は予選後のコメントでこう発言している。

■Button wary of Kobayashi threat
http://en.espnf1.com/china/motorsport/story/75718.html
"Our aim will be to go for victory," Button said. "That won't be easy, but we ought to be as quick or quicker than most of the cars in front of us in the race. The unusual one is Kamui, who seems to have very good long-run pace."
「優勝を狙いたいけど簡単ではない。でもレースになれば、僕らは前にいる大半の車より早いはずだ。ただ例外なのは可夢偉。彼のロングランペースはとても速そうだからね


4)上海は誰にでもチャンスがある
直線が長く、オーバーテイクのチャンスが多い。過去には雨も降っている。
過去8年間で7人のドライバーが優勝している中国グランプリ。
レッドブルの初優勝も上海だった。
チームの「格」より「その時点の力と運」が反映されやすい印象がある。

5)タイヤ交換
どのチームもフリー走行からタイヤの減りが激しく
予選でもタイヤをセーブするチームが現れるような傾向が見られた。
前回マレーシアから「路面温度とタイヤ性能の作動領域」という問題も顕著になった。
各チームが適切なソリューションを見出す途中過程にある今レースは
タイヤマネジメントに優れた小林にとって有利といえる。

「他チームよりタイヤを長く保たせてピットインを減らしマージンを稼ぐ」
という戦略は、もはやSauberの十八番となってしまった感もあるが
今回こそ勝利のカギを握る戦略となりうるかもしれない。
ちなみにピレリは「ピットインは2〜3回」と予測しているが・・・

6)今がザウバーの最高潮!?
次のバーレーンGPが政情不安から中止になってしまう公算もあり、
ヨーロッパに戻るまで1ヶ月近い空白が生じる。
ムジェロでのテストを機に各チームの本格的な開発競争の幕が明けるので、
予算の少ないSauberがアドバンテージを保てる最後のチャンスかもしれない。
チームにもそのような認識とプレッシャーがあるだろう。
ぜひ「着実なポイント狙い」ではなく「上位を見据えた一発狙い」を!
大胆かつ繊細な戦略で、チームも小林をサポートしてほしい。
セパンの快挙の直後だけに、レースマネジメントは違ってくるはずだ。

7)小林の秘めた思い
予選後のインタビュー全録を読んでいただきたい。
(国際的に活躍する日本人アスリートに共通するのだが)
恐れず気負わず、地に足を着け、現実と将来を見据えている。
これは過去の日本人ドライバーには無かった特質
だろう。
ふだんは饒舌な彼が、はぐらかすようなコメントを連発しているところに
「大きなことをやってのける人」が、その直前に見せる
自信や確信のようなものが見え隠れする気がして、非常に楽しみだ。

小林可夢偉 予選後・会見全録【中国GP(土)】
http://www.f1-stinger.com/f1-news/voice/2012/04/14/039833.html

可夢偉:まあ「4番」というのは想像以上ですけど。でも、クルマが全般的に、今週はよかったから。そういう意味で、ちゃんとそこで、結果残せたというのは、チームにとってもよかったし。
この(予選の)結果(から)、明日、どうなるかわからないけど。明日はしっかり、クルマの性能を出せるように、やれれば──。まあ、結果はあんまり気にせずに、行きたいと思います。

Q.今回は、とくに予選に重きを置いていた?
可夢偉:普通にやってました、あんまり、そこは考えずに。

Q.でも、昨日から、予選でできるだけ前に!とは言ってたよね?
可夢偉:まあ、レース重視ですよ。

Q.明日、スタートですけど、どんなスタートで行きたい?
可夢偉:・・・!(笑)

Q.周りにいる人たちが、全員、後ろにいる、とか?(笑)
可夢偉:それはユメでしょ、予想じゃなくて(笑)。・・・わかんない、その場、その場を凌いでいくしか──。

Q.3番グリッドに"座る"感覚というのは?
可夢偉:座ったことないから、わかんないです(笑)。・・・これで、スタート、ヘボったらすごいよ、何を言われるんやろ、と思って(笑)。

Q.プレッシャーが?(笑) 
可夢偉:プレッシャーはないけど。

Q.このサーキットのグリッド位置は、アウト側とイン側では、けっこう違う?
可夢偉:どうなんですかね。あんまり、意識してない。

Q.明日は、"日本の桜"をここで、バーッと咲かせてください(笑)。
可夢偉:(微笑)

結果がどうであれ、今回、小林が優勝争いを演じることで
ドライバーとして1つ上のステージに登れることを大いに期待したい。

最後にF1公式サイト「Formula1.com」の分析記事を紹介したい。

■Qualifying analysis
http://www.formula1.com/news/features/2012/4/13227.html
"He said he’ll be realistic for the race, but realism in Sepang meant a possible victory. And rivals have already noted the Japanese racer's excellent long-run pace, so watch the Swiss team carefully."
小林はレースに向けて「現実的に」と言うが、現実を見るなら前走のセパンではザウバーに優勝の可能性があった。ライバルは既にこの日本人の素晴らしいロングランペースを警戒している。ザウバーは要注意だ。